「オリオン13」楽曲レビュー
〜風の暦で旗を立てる
(謎)
written by 管理人

 00. 視点の設定
 このアルバムの出来がよいかどうか、こういうレビューはある意味では簡単です。私はこのア ルバムは「良い出来だ」と思います。しかし、これでは分析、検 討したことにはなりません。きちんと立場を設定して検討することが必要だと思います。

そこで私は検討の手がかりを次の言葉に求めることとしました。

「谷村新司こだわりのバンドサウンドが今 よみがえる」

「オリオン13」の宣伝文句です。まさかこの文句にウソはないでしょう。
そこでこの言葉を手がかりに「オリオン13」を考え見ようと思うのです。

上の文句から、いくつかのことが分かります。

1 谷村新司は「バンドサウンド」である
2 谷村新司に「こだわりの」「バンドサウンド」があ ること
3 かつて、谷村新司には「こだわりの」「バンドサウ ンド」があったこと
4 谷村新司が「こだわりの」「バンドサウンド」を 「よみがえ」らせたこと


まわりくどいようですが、順に考えていきます。

1  谷村新司は「バンドサウンド」である

谷村新司はソロなのに、なんで? という疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。

しかしこれは簡単ですね。シンジはアリスでしたら、アリス=バンドサウンドと考えれば問題ありません。

すると今度は、アリスはフォークグループで、バンドではないのではないか、との疑問が出てくるかもしれません。この疑問に答えるのは意外と難しいです。仮 にグループ=バンドだとすると、「バンドサウンド」=「グループサウンド」ということになり、おかしなことになってしまいます。さらに「サウンドとは何 か」など言い出したら、音楽学の深みにはまってしまいます。

ここはさしあたり、バンドサウンドを、「当該ミュージシャンが選好する楽器演奏者達が奏でる音楽」とでもしておきましょう。
なお、ウィキペディアでも「バンドサウンド とは曲の アレンジ の一種である。 ロックバンド で演奏された曲、または ロックバンド で演奏されような形態の アレンジ のサウンド 。実際結成されている バンド で演奏しなくても、その様な形態を取って演奏されればバンドサウンドである」とかなりいい加減な定義をとっています。


こうすると、アリスも、シンジのツアーバンド「HUMAN ZOO」も「バンドサウンド」であるということになります。さらに、シンジはアルバムのレコーディングを一発録りしているという事実から、アルバムの音も 「バンドサウンド」に含めることができます。そして、「バンドサウンド」のなかには、シンジの歌、詩も含めることが許されるでしょう。シンジの場合、すべ てあわせて「バンドサウンド」なのです。


2と 3 かつてこだわりの「バンドサウン ド」があったこと

「バンドサウンド」という語に決着がついた今、ここには争いはありません。

基本的にすべてのアルバムに「こだわり」があるとしていいのです。


4  谷村新司が「こだわりの」「バンドサウンド」をよみがえらせたこと

今までの回りくどい検討は、次の問いに収斂されます。


シ ンジは、これまでこだわってきた全てのアルバムにおける「バンドサウンド」のうち、 何を 「よみがえ」らせたのか。


私は、この視点から考えてみます。

ティオぺぺさんが「歌手人生のベスト盤」という解釈を示されていましたが、これはあながち的外れではありません。過去のシンジを繙けば、その「ベスト盤」 の中身が明らかになるのです。


 01.旗を立てる (4:35)作詞:谷村新司/作曲:谷村新司/編曲:瀬戸谷芳治

 このアルバムの基本線は、アレンジャーが瀬戸谷氏であ ることから、『半空』の延長だと考えられます。すると『半空』をよみがえらせたのでしょうか? しかし私は、 この曲は、 『アリス7』の1曲目「Wild Wind」をよみがえらせた と捉えます。 理由はみっつ。

1  ギターのカッ ティングではじまる切り口

アリスを彷佛とさせてくれます。

2  コード進行

当HPの常連、アンソニーさんが次のようなことを語って下さっています。

「WildWind〜野生の疾風〜」はG→D→C→D×2
「旗を立てる」はG→F→C→G×5
Fが凄く新鮮ですよね!

すばらしい!! 私が漠然と感じていたことをズバッと指摘して下さいました。
基本線はアリス(Gからはじまる激しいストローク)しかしFを入れて現在のシンジを表現。これぞ『よみがえり』なのです!

3  歌詞

このアルバムで、もっとも意志がはっきりでた曲です。

叫んでます。               「待つのはもうやめよう 叫びはじめよう」

シンジの現在の意志ですね。現在進行形の「叫び」です。

そして、走ってますよね。         「走れ 今!」

さて、「Wild Wind」も叫んでますね。   「叫べ、へへヘイ!」

そして、走ってます。           「走れ へへヘイ!」


完全に共通しているのです。しかし、この二つは裏返しです。「Wild Wind」は「墓場に向かう獣」をつまり、絶頂をきわめた獣=アリスが、墓場=絶頂から降りていく光景を歌っているのです。前を向いている「旗 を立てる」とはまったく逆です。
シンジは、「Wild Wind」を裏返して「よみがえ」らせたのです。

この解釈、どうでしょうか。

え? シンジ本人が読んだら吹き出すって?? ふ、何をおっしゃっているんですか。その時私はシンジにこう言うでしょう。

「シンジ よ、君が間違っている」 と。


(07.4.22)


 02.オリオン13 (4:43) 作詞:谷村新司/作曲:谷村新司/編曲:瀬戸谷芳治

 実は、「旗を立てる」は「例外」です。いきなり何を言っているのかという感じですが、これ はつまり「旗を立てる」が「オリオン13」というアルバムを支配していると思ったら間違いであるという意味です。このアルバム全体の雰囲気を決定付けてい るのはこの曲、「オリオン13」です。
 このアルバムの特徴の一つは、歌謡曲っぽい曲が多いことです(別に悪い意味ではない)。「オリオン13」も基本的には歌謡曲路線の曲であり、こういう曲 が多いために、聴きやすいアルバムとなっているというわけです。
 私はこの曲を聴いた時「どこかで聴いたことがある」と思いました。
 まず歌詞。

「Runnin'on」で す。「叫んでも 叫んでも オリオンにも届かず」

「オリオン13」では 「オリオンにとどけと 響く歌はやがて」

 シンジ本人(07.4.18大阪城ホール「やっとオリオンを歌うことが出来る」)が言ってましたからこれは当然。

 問題は次です。アレンジの方です。一体なんだろう・・・・ちょっと探してみると、次の曲にいきあたりました。「真夜中のミュージアム」で す。『バサラ』収録のこの曲の冒頭を聴いてみて下さい。雰囲気が非常に似ています。もっとも、このこと自体は偶然でしょう。しかしみなさん、『バサラ』を もう一度聴いてみて下さい。いわゆる「ニューアダルトミュージック」(歌謡曲+フォーク×演歌?)が、『オリオン13』の下敷きの一枚となっていることに 気付く でしょう。アルバム『バサラ』でも表現されている「ニューアダルトミュージック」が、ポニーキャニオン時代の「大人のロック」に、そしてこのアルバムに最 も近い位置にある『半空』につながり、『オリオン13』という究極 形となるわけです。
この 曲は、歌詞では「Runnin'on」、アレンジでアルバム『バサラ』を甦らせたものだと考えます。
(07.4.23)
追記:サウンド的に一番近い「半空」の「明星」も、 雰囲気(特にコーラス)がよく似ています。☆つながりか?(07.4.24)

 03.ミクロのテーマ (5:44) 作詞:谷村新司/作曲:谷村新司/編曲:瀬戸谷芳治

 曲はいいけど歌詞が意味不明。私の感想です。
 この歌詞でいう「僕」とは誰のことなのでしょうか??シンジ本人でしょうか??だとしたらシンジが説教していることになってしまうのではないでしょう か。「生まれてきたことに感謝し、このことを『忘れないで』」。まあ、でも百歩譲ってこれはこれでいいとしましょう。しかしすると今度は「にげない あき らめない・・・」の歌詞の意味がわからなくなってしまいます。ミクロの確率を超えてきたことだけでもすごいことのはずなのに、いろいろ「べからず集」を言 われるとつらくなってしまいます。5つの「ない」にプラスして「忘れないで」「なくさないで」と7つも否定形が出てきます。ごまかし、開き直りは働く者の 必須アイテムではないでしょうか。
 とはいうものの、仮にカラオケにこの曲が収録されたら、私 は、他の人を押しのけてでも歌うでしょう(笑)曲はとっても気持ちいいですね。何を甦らせたのでしょうか? 「君を忘れ ない」や「ノーザンエクスプレス」であじつけで使われていたゴスペルを前面に押し出した感じです・・・現在のところは保留でお 願いします(笑) 見つけたら書き直します。(07.4.24)
 忘れてましたが、「風信子」とそっくりなところがあるのはみなさんご存 じの通り。ゴスペルだけにとどまらないシンジの深さをうかがいしれます。07.4.24追記)

 【謎が解けた!】この詩、意味不明でしたが、ようやくわかりました。1番の詩には意味がなく、全てのメッセー ジは2番に込められているのです。ミクロの確率で生まれてきた僕らは、「箱」に感情をつめたり、開いたりし暮らしている。その暮らしの中で必 要なことは「にげないあきらめないとらわれないごまかさないひらきなおらない」なのです。「raise your hand」などは全部「あいの手」。「幸せなら手をたたこう」という程度の意味です。やっとわかりました!(07.4.25)

【1番にも意味があった!】

1番の歌詞には意味がないと言ってきましたが、ここに きて意味があるとの見解に至りました。それは、次の理由からです。
それは、この歌、岡山にこの春開校した、環太平洋大学 の応援歌であることがわかったからです。

すると、1番の歌詞の意味もわかってくるとのではない でしょうか。

>逢いたい時にはいつだって 思い出してくれ
>どんなに離れていても かまわない

これは、大学のことではないでしょうか。

>逢いたい時にはいつだって 僕がいるからね
>思い出したらいつだって そばにいるよ


「僕」というのは、友達一般をさすのかもしれません が、大学ととらえてもいいと思います。

「大学時代は思い出したらいつだってそばにいるよ」

とこんな感じで読めます。

とはいうものの、環太平洋大学からの依頼があってでき た曲であるという前提がないとこの説は成り立ちません。この前提がないと、ちょっと苦しい説ではあり ます。


【あ のフロントスリーパー氏が新説を発表!】

本サイトでは最近すっかりご無沙汰しているフロントスリーパー氏が、「ミクロのテーマ」について新説を発表しました。かなりの力作、かつ興味深い作品で す。ぜひご覧下さい!

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管さんの、1番に深い意味はないと言う一貫した主張に私もそうかなぁ〜と思ってましたが、 もしそうだとしたらこの曲はなんとも薄っぺらくなってしまいます。
また、大学のテーマソングという定義での解釈もなるほ どと思わせますが、それだと1番と2番のバランスが崩れます。

前置きが長くなりました。

私はこの曲、1番にこそ意味があると感じ るのです。
意味 というより、この曲の主張、答えです。
最初 (1番)にズバッと主張・答えを発し、2番でその理由を語ってるんではなかと。


では、具体的に検証しましょう。


逢いたい時にはいつだって 思い出してくれ
どんなに離れていても かまわない

この1番の詞は、
この世に生まれてきたことが 奇跡なんだよね
ミクロの確率さえも越えてきた

に、かかります。
つまり、ミクロの確立を超えて生まれ、そ して出会った。
そん な奇跡的な出会いを共有してきた仲間なんだから、今は離れていようと、会えないでいようと、それは大した問題ではない。思いだしてくれるだけでいい。と、 読めます。


続けて、

逢いたい時にはいつだって 僕がいるからね
思い出したらいつだって そばにいるよ


この詞は、

この世に生まれてきたことが すべての始まり
「ありがとう」の笑顔だけは 失くさないで

に、かかります。
生きているという事が重要で、お互いいろ んなことがあろうと、一人ではない。自分を見てくれる人が、必ずいてる。つらくなったら思いだしてくれ。

と、読めます。

こうして考えると、1番の詞が持つ意味も案外重要なん ではないでしょうか。


・・・そして、Raise your hands and clap の管さんの解釈、「幸せなら手をたたこう」は、これ以上的確な訳はないと思います。
さすが、管さんと、唸なりました。

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なかなか面白い見解です。1番と2番とを連動させると いうアイディアが秀逸です!(07.06.21)



 04.イリス
 冒頭は「マラソンマン」を彷佛とさ せます。が、この曲は「セ ピア」のような懐かしい歌謡曲、もう少し言えば70年代のテイストが強調されているような感じがしました。「胸キュン」の歌と 考えるのが素直な解釈ではないでしょうか。ギターの音が心地いい佳曲ですね。
 もっと似ている曲があるはずなんですが、どうしても思い出せません。今晩考えますw(07.4.25) 


【「イリス」への違和感〜07年の掲示板から】

まるこさんより、

>「イリス」は妹に強引に聞かせたら、ギリシャの女神のことかと思ったと
>いわれました。ギリシャの女神かなんかにいるのか?よくわからない・・・。
>神秘さがたりないだとか・・・。

との書き込みがありました。私はなるほどと思い、調べてみました。
 
イリスっていう人(?)いました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%82%B9

アヤメとか虹とかの歌詞がなぜ使われたのかも、ここからわかりますね。
でも、これくらいでわかってしまうのがどうも残念。。。
また、アイ=愛=目とかけているのもわざとらしいような。。。

しかし、本人いわく、そうとう深い意味のある歌詞らしいです。
でもどうなんしょうか、素人でもわかるようにしてもらわないと、
ただ勿体ぶられているだけになってしまいます。
だからどうもイリスが受け入れられなくなっています。

それと、ちょっと華やかすぎるのではないかと。 最初は「いい曲だ」と思いましたが、ちょっと疲れてきます。。。違和感を感じたからでしょうか・・・この曲の聴き方を教えて下さい。

(まるこさん、引用させていただきました。問題がありましたらご連絡下さい。)
(07.06.21)
 

 05.わかれの詩
 

 06. さくら
 

 07. ココロノジカン
 この曲は、「オリオン13」でおそらく唯一の「エロ・ラブソン グ」です。このアルバムには直接的なラブソングがないとお嘆きの皆様もきっと満足していただけるものと存じます。以下説明させていただきま す。シンジは「逢う」という言葉を何気なく用いていますが、「逢う」には2種類の意味があります。ひとつは、友人同士が「逢う」。これは「会う」と同じ意 味です。「逢う」=「会う」というわけです。もう一つは恋人同士が「逢う」。「逢瀬」という言葉に代表されるように、こちらの「逢う」という語には「行 為」が含まれております。「逢う」=「行為を行う」という意味です。シンジは(おそらくは無意識的に)これらを使い分けていますが、「ココロノジカン」は 完全に後者の意味です。なぜなら後半に「やわらかなその手で抱いてくれるのだろうか」としっかりと行為を連想させる歌詞があるからです。こう考えると 「あー逢いたくて君に逢いたくて 誰も知らない場所へ 遠い遠い場所へ」などという歌詞は、とてつもない「エロ」さを伴って聞こえてきます。さすがシン ジ、言葉の魔術師です。

 しかし歌詞をこう解釈すると、この曲のアレンジには若干の違和感を禁じ得ません。明るすぎるのです。たとえば「サテンの薔薇」のような「詩の内容は明る いのに、なんとなく暗さが残る」というシンジ独自の世界とは異なっているのです。ところがおかげで曲は聴きやすくなり(曲はすごくいい)、テレビのエン ディングテーマに採用されることになったわけで、こればかりは一長一短ということになりましょう。(07.05.04)

 08. 風の暦
 

 09. 花
 

 10. 睡蓮
 

 11. Heart in Heart
 

 12. ココロツタエ
 

 13. River of Life
 

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