CD「初期盤」と
「オリジナルコレクション盤」の
比較検討から見えるもの

By 管理人


はじめに ― 問題状況

 ヤフーオークションを見ていると、「JADE翡翠」や「海を渡る蝶」が、とんでもない値段で落札されていたり、出品されたりしています。発売当初あまり売り上げの伸びなかった作品が今になって人気になる、まさにお宝業界の常識がここにも再現されているわけです。ところで、これらのCDを売り出す側が一つの殺し文句としている言葉があります。それは「初期盤」という言葉です。初期盤だと貴重ということになり、売り手も希望落札価格を高く設定しているようです。しかし、そんなに初期盤は珍重されるべきものなのでしょうか?


1 初期盤・オリジナルコレクション盤とは
 
 ちょっと急ぎすぎました。「初期盤」「オリジナルコレクション盤」とについて説明しなければなりません。「昴」〜「OLD TIME」(?ちょっとはっきりしません。情報をお持ちの方はご一報下さい)までのCDには、初期盤とオリジナルコレクション盤とがあります。「初期盤」というのは、ポリスターがPAX MUSICAレーベルになる前、つまりCASABRANCAレーベル時代に出されたCDです。「オリジナルコレクション盤」というのは、PAX MUSICAレーベルになってから、1992年ごろ、「オリジナルコレクション」シリーズとして発売されたものをさします。この二種類の盤のうち、初期盤が、どうやら高い値打ちを有するものとされ、高値がついている模様です。ここで最初の問に戻ります。本当に初期盤は珍重されるべきものなのでしょうか。今回は、この問題について、初期盤とオリジナルコレクション盤の仕様を比較検討するという視点から考えてみたいと思います。「仕様」の視点からの検討は、買い手がCDを購入してまずチェックするのが仕様であることから考えた時、重要な意義を有するものです。

2 初期盤について

 私の手元にあるものは、初期盤のものが多いので、まずは初期盤について見てみます。次の点に着目してみました。順に検討していきます。
 
 (1)ジャケット(表・裏とも)
 (2)オビ
 (3)背表紙
 
 
 (1)ジャケット(表・裏とも)
 ジャケットは、当然の事ながら、レコードと同じです。 しかし、ジャケット裏は、ちょっと異なります。レコードは正方形ですが、CDは長方形なので、ジャケットをそのまま持ってくると余白が出来るため、余白部分が塗りつぶされています。例えば、「抱擁」の場合は赤、「昴」は薄紫、という具合です。そしてその塗りつぶされた部分は、盤の左側です。すると、オビがついてもその部分は隠れないことになります。
 
 (2)オビ
 オビには、二つの特徴があります。まず、それぞれに異なった色を使っています。「海を渡る蝶」は水色、「EMBLEM」の場合はオレンジです。各作品のイメージに合わせているようです。次に、オビ一杯にタイトル名・氏名が書かれています。これは目立つかも。
 
 (3)背表紙
 背表紙を見ると、「作品名/谷村新司」の順番で記されています。「昴 ―すばる― /谷村新司」。こんな感じです。


3 オリジナルコレクション盤について

 つぎに、オリジナルコレクション盤を見ていきます。初期盤と同様の点を見てみたいと思います。
 
 (1)ジャケット(表・裏とも)
 ジャケットは当然の事ながら、レコードと同じなのですが、裏が、初期盤とは異なります。先ほど指摘した塗りつぶし部分はあります。例えば「伽羅」なら紫(パープル?)ですが、この部分は盤の右側にあります。すると、オビがつくとその部分は見えなくなります。
 
 (2)オビ
 二つ特徴があります。まず、「オリジナルコレクション」というシリーズで発売されている関係で、全て統一されています。もちろんイメージカラーは用意されていますが、個性を強く主張するという感じではありません。もう一つは、オビの背表紙に、アルバム発売順に番号がうっていることです。「昴」なら1、「海を渡る蝶」なら2、という感じです。
 
 (3)背表紙
 背表紙は、「谷村新司 (余白) 作品名」の順序で記されています。「谷村新司  伽羅(きゃら)」。こんな感じです。


4 検 討

 こうしてみると、音質面を除き、2つの盤は、その仕様においてかなり異なることがわかります。特にジャケット裏、オビにおいて相当の違いがあります。それぞれ検討してみます。
 
 (1)ジャケット裏
 まず、ジャケット裏ですが、塗りつぶし部分の位置が異なっています。初期盤は左、オリジナルコレクション盤は右です。これは重要な相違です。なぜなら、初期盤の方は、オビを付けるという事についての考えが足りなかった事がよく分かるからです。オビをつけると、ジャケット裏の4分の1程が隠れてしまいます。それに塗りつぶし部分が残るわけですから、ジャケット裏全体の面積の5分の2程は色だけ、デザインが見えないということになります。これではあのコリまくったデザインが楽しめないということになってしまいます。その点オリジナルコレクション盤の方は、オビを付けたら塗りつぶし部分が見えなくなるようになっていますから、さすがの気配りということが言えましょう。ジャケット裏に関する限り、初期盤は重大な欠陥を抱えていることになります。
 
 (2)オビ
 次にオビを検討したいと思います。一見すると甲乙付けがたい物がありますが、初期盤はなんとなく野暮ったい。というのは、タイトル名・氏名がオビ一杯に書かれていて、重い印象を受けるのです。「エムブレム」は特にそう感じます。この点、オリジナルコレクションの方は、文字のサイズも適当で、洗練された印象があります。このように見ると、ただし、数字が入っているので、揃えないとちょっと物足りないかもしれません。こうしてみると、オビについては、どちらが優れているなどとは言えないということになります。
 
 (3)背表紙
 氏名が先か、作品名が先か。正直どちらでもいいわけで、これについても特に議論の対象にはなりそうにありません。ただし、付け加えると、学術論文における引用は、「氏名・作品名」の順で記すのがしきたりとなっているようです。すると、シンジを研究対象として真剣に考えるのであれば、「氏名・作品名」の順で表示する方がやや勝ると言うことになります。


まとめ
 
 4の検討をまとめると、
 
 (1)ジャケットについては、オリジナルコレクション盤が勝っている。初期盤には欠陥がある。
 (2)オビはどちらが優れているとはいえない。
 (3)背表紙は、引用のことを考えると「氏名・作品名」の方が勝る。
 
 したがって、結論としては、オリジナルコレクション盤の方がCDの仕様としては勝っており、仕様に関しては初期盤が珍重される根拠はないという結論になります。

おわりに
 
 以上、仕様に関しては、初期盤が珍重される根拠はないということを論証しました。商品購入の参考にしていただければ幸いです。なお、音質はどちらもあまり変わりありませんよ。

追記:CD価格の高騰を憂う

 それにしても、なぜ私はこのような考察を行ったのでしょうか?それは、「はじめに」でも触れましたが、ヤフーオークションにおけるCD価格が高すぎることに端を発しています。特に「JADE翡翠」と「海を渡る蝶」、「エムブレム」は高すぎです。最初から7500円をつけている売り手もいます。中古が高いのは人気のある証拠なのかもしれません。しかし、このような「お宝バブル」に問題はないのでしょうか?高値で安定すればまだいいのですが、バブルがはじけて、突然「海を渡る蝶」の価格が急降下するなどというのは淋しすぎるのではないでしょうか。適正な価格で取引がなされることを祈るばかりです。


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